シンさんは愛妻家
昼前のコンビニは混んでいたけど、

少し、早い時間だったから、サラダがあった。

うん。美味しそうには見えないけど、野菜だ。
トマトとブロッコリーとコーンが乗ったサラダと、ブレンドのコーヒーを買う事にして、
数人並んだ列に並ぶ。

後ろに並んだ2人組の看護師の1人が僕に会釈する。

「常盤先生、お疲れ様です」

外来に所属する放射線科の診察についてくれる。看護師だった。
少しきつめのメークがよく似合う。30代。

「お疲れ様。えーと高梨さん?だったっけ?」

「覚えてくれたんですね。良かった。
先生、ここの病院に慣れましたか?」

「うん。どこも放射線科は変わらないから…」

「…なんでも聞いてくださいね。私、ここ長いんで…」

「そう…ありがとう」とニッコリ微笑むと、
頬を染めて微笑み、僕の瞳を意味ありげに見つめてくる。

まあ、この子はどうだろう?
外来勤務は家庭がある女なのかもしれない。
めんどくさそうだ。と少し思う。

会計を終え、

じゃ、と言うと、

「常盤先生、診察はしないんですか?」

「しないこともないけど、任せてあるからね」

と微笑んだままでコンビニを後にした。

グイグイ来られたら面倒だな。

と紙カップをドリップの機械に置き、
温かいブラックコーヒーを落として部屋に戻った。

最近のコンビニのドリップのコーヒーは香りがいい。

ゆっくりコーヒーの香りを吸い込むと

すぐに会った看護師のことは忘れてしまった。





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