拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 ーー ”俺の彼女。”

 私達が付き合っていることは内緒にして欲しいと、私がお願いしたことなど端から聞いていないかのように。優斗は浦田さんに、私が優斗の彼女であることをキッパリと言い切った。
 
 そう言った時の、浦田さんを見据えた優斗の目は冷たく座っていて、あからさまな敵意が感じられた。

 何事にも臆することのない優斗は女からしてみれば頼もしく思えても。浦田さんのような高圧的な同性の先輩社員からすると、鬱陶しくて苛立つ存在だった。

 しかし、優斗は誰彼構わず、こういう態度を取るわけではない。
 そこが浦田さんとは決定的に違う部分で。今、優斗が縄張りを荒らされた狼のごとく浦田さんに噛み付いているのは、すべて私を不快な状況から守るためだ......。

 そう思うと、私は。こんな場面にもかかわらず胸の奥がキュゥッと鳴いてしまった ーー。


 「”俺の彼女”?それマジで言ってんのか??」

 「はい」

 「あの......っ、とっ、戸川君......っ!」

 「沙綾。ごめん、俺もう黙っていられない。飲み会の時のこともあるし。浦田さん、俺と沙綾は、きちんと付き合ってるんです。だから、悪戯に彼女へ、ちょっかいを出すのは絶対にやめてください」

< 35 / 136 >

この作品をシェア

pagetop