拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 「沙綾ちゃん本人からは、お前と付き合ってるとは聞いてないけど??」

 やっぱり。浦田さんは私に興味があるのではなく、飲み会の時に私を助けて自分に楯突いた優斗のことが気に入らないんだ。

 だから、浦田さんは優斗と親しげにしている私を彼から奪って、優斗を屈服させたいんだ。

 もともとは、酔っ払った浦田さんが私に絡んできたことから始まった話。それを優斗は真っ当に止めただけなのに、なんでこうも因縁をつけたがるのか。
 
 私は心底、浦田さんの人間性に嫌気が差した。

 でも、一番の原因は私だ。飲み会の時に、私が浦田さんを上手くあしらうことが出来ていたなら。優斗は余計な、とばっちりを食らわずに済んだ......。

 
 「どうしても沙綾を食事に誘いたいのなら、仕事で俺に勝ってからにしてください。仕事がデキて頼りになる男の方が、彼女の傍にいる権利があると思いますから」

 「はぁ?戸川、お前。自分で墓穴掘ってるのが分かんねぇの?威勢がいいだけじゃ仕事は、まわせないんだよぉ?」
 
 ......確かに、浦田さんの言う通り。新入社員の優斗が経験もコネもある3年先輩の浦田さんに仕事で勝つのは難しいように思える。

 それに。浦田さんは外面がめっぽう良くて、取引先の部長や常務にやたらと評判が良い。

 ーー 浦田さんは見下すように、優斗を斜め下から見た。

 「じゃあ、沙綾ちゃん。デート楽しみにしてるよっ」

 勝気な様子で後手に手を振りながら、浦田さんは肩を揺らしてオフィスに戻って行った。

 「優斗......。なんで、あんな事!?浦田さん相手じゃ、不利だよっ!」

 こういう時、気休めでも良いから恋人の肩を持つのが彼女という存在なのだろうけど......。

 「勝てるよ」
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