拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 いや、ちょっと待ってよ!

 ”大丈夫”って......。

 ーー 私の方は、いつでも大丈夫じゃないからっっ!

 だってほら。”女の子の日”があるし。

 ......って、違う。そういう問題じゃなくて!

 私はまだ、心の準備が出来ていない。

 「ははっっ!そんなにびっくりしなくても。沙綾、今、変なこと考えなかった?顔、赤いよ?」

 「かっ......、考えてないよっっ!」
 
 「そう?......残念。」

 残念て......。

 ううん。彼からしてみれば確かにそうだ。

 付き合って3ヶ月近く。しかも一緒に住んでいてベッドまで同じ彼女を抱けないなんて、かなりの苦行だ。

 優斗が放った言葉は、私を傷つけないために彼が今まで口を噤んできた行為の”もう限界だよ”という遠回しなサインかもしれない。

 私はいつまで幻想の中を彷徨っているのだろう。

 初恋の男(ひと)はいくら待っても現れない。

 だって、私の初恋の男(ひと)は。ずっと、ずっと前に亡くなったんだから......。

 ーー こうして、私は自分自身を納得させた。

 そして、この時。私は現在の恋人である優斗に、全てを捧げる覚悟を決めた。

 
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