拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 「俺は、沙綾をずっと守り続けるよ。......悲しみや、寂しさからも」

 優斗の真摯な眼差しは。私の心の奥に”すぅっ”と浸透してきて彼の言葉は、私の過去の傷のことを言っていると分かった。

 そして、そんな彼の言葉は私の胸をキュゥッと掴んで、渇望させた。

 私は、胸に開いた歪な傷を塞ぐように彼に後ろから抱きついた。言葉無く。

 「沙綾?どうした??」

 「.......ううん。ちょっと、このままにさせて」

 「ダメ」

 「?」

 彼に”ダメ”と言われて、私が戸惑ったのも束の間だった。彼は私を拒否するわけでは無く、むしろ彼は私の方に向き直り正面から私を強く抱きしめてくれた。
 
 「後ろから抱きついたんじゃ、沙綾の背中が寒いだろう.......」

 私は黙ったまま、彼の温かな胸に顔を埋めて思った。

 私は今まで、幾度と無く彼の温もりに救われてきた。

 それでも、時々。古傷が痛み出すのは、優斗が完全に私の中に棲んでいないからだ。
 
 優斗が私の中に完全に棲んでくれれば、きっとこの傷も完全に塞がるはず.......。

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