拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 私達は眠る時、ベッドルームの灯りを仄暗い橙色にしている。

 こんなに、ムードのある寝室で今までキス以上の事が起こらなかったなんて、不自然にもほどがある。

 それだけ、優斗が今まで私を大切にしてくれていた証拠なんだと思う。

 優斗が私に告白してくれた時。彼は初恋を忘れられない私の気持ちごと包み込むと言ってくれた。
 
 私はそんな彼の言葉を真に受けて、今まで散々彼に甘えてきた。

 何よりも、彼の私に対する気持ちを無視して......。

 好きなひとを想う気持ちが、どれだけ切ないものか私は身をもって知っているというのに。

 そのひとが実在して手の届く距離にいるのに触れられないなんて、その切なさは如何ほどのものか。

 優斗の気持ちを考えたら、私は胸が苦しくなった。

 でも。そんな切なさも今夜、終息を迎える。

 お互いに ーー。
 
 「俺の腕に頭乗せて。」

 私の腕一本分開いた彼と私の距離が。彼の、この一言で埋められた。

 私は身をよじりながら彼の傍に行き、腕に頭を乗せた。

 私の頭の重さなどには、ビクともしない彼の腕。

 長くて見た目以上に筋肉質で硬く、血管の流れに沿うように現れる縦の筋。

 男性的な優斗の腕の質感に私は胸が高鳴った。
 
 これから、この腕が素肌の私を抱きしめる ーー。

 「こっち向いて......」

 
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