拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 気がつかれないように精一杯、声を押し殺したつもりだったのに ーー。

 「優斗?どうしたの......?」

 「沙綾、ずっと震えてたから......」

 ここで優斗を拒否したら、彼を傷つける。だから、悟られないようにしなきゃ。

 優斗は何も強要していない。

 むしろ今夜の事は、私からアクションを起こした。

 それなのに。私は今、要領の悪い強迫観念に苛まれている。

 「なっ.......、慣れてないだけだよっっ.......」

 突っぱねる私に、優斗が諭すように言った。

 「じゃあ、無理やりしてもいいの??」

 私は彼に、返す言葉が見つからなかった。
 
 彼は、しばらくの間。静かに私の答えを待っていたが落胆したのだろうか、ため息混じりに言った。

 「心が揺れたまま。男に身体を預けちゃだめだよ」

 その言葉には含みがあり、そう言った彼の顔は明らかに傷ついていた......。

 今夜の出来事で、きっと優斗は私に愛されていないと感じただろう。

 覚悟を決めたはずなのに。

 今夜私が、した事は。気持ちが揺れている事を彼に露呈して、傷つけただけだった。

 しかも、その事を彼の口から言わせてしまうなんて......。

 私は、ほとほと最低だ。
 
 
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