拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 規則正しい秒針の音が緊迫感を煽る。

 ジリジリとした切迫感が限界まで達した時、私は次の行動に走った。

 そして、この時。私の頭の中は意外にも真っ白だった。

 「休日出勤おつかれさま。午後から出かけてくる、百合奈からお茶に誘われたの」

 ーー  全くの嘘。

 まず、本当に優斗が会社に行ったのかを疑っていること。

 そして、百合奈は今頃。それこそ彼氏とデート中。

 最低限の身支度を整えて、素早く彼にLINEを送った。

 私は初めて優斗に嘘をついて、彼から逃げた。

 嘘つき、意気地なし、卑怯者、冷たい女。

 心の中で、何度自分を責めて罵っても、一ミリも心は軽くならないし、贖罪になどならない。

 それどころか私は、絶望的な答えを自覚していた。

 こんなことをするなんて、結果的に私は優斗を愛していない。


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