拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 休日の街は、デートを楽しむカップルの姿がやたらと目につく。

 そんな幸せそうな光景に目を背けても、またすぐ別のカップルの姿が目に入って私の胸を容赦なく抉った。

 早急な孤独感に耐えきれず。私は彼から連絡が来ていないか確認するため、スマホを取り出した。

 調子いいな私......。
 
 こんなことできる立場??

 優斗は都合のいい男じゃない......!

 スクロールしなくても分かる。バイブレーションにしてずっとポケットに入れていたけど、何の音沙汰もなかった......。

 勘違いも甚だしい。

 混沌とした街並みと自分のぐちゃぐちゃな感情が混じり合って、吐き気がする。

 ーー 私にはもう、甘えられる男(ひと)なんかいない。

 「もう歩けない......」
 
 そう誰に訴えるわけでもなく呟いて。重い足を引きずりながら、ようやく小さなカフェに落ち着いた。

 私はメニューも見ずに、どこのカフェにでもあるコーヒーをうつむいたまま注文した。

 泣いていたから顔を上げられなかった。
 
 「沙綾ちゃん?」

 聞き覚えのある声がした。

 でも、その声は好きな声じゃない。

 どこまでもツイてない私.....。

 最悪な日に、最悪な男(ひと)と会ってしまった ーー。


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