拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 「今日は、ごちそうさまでした。すみません、仕事の邪魔しちゃって......」

 「え?なんで?オレが沙綾ちゃんにデート申し込んだんだよ?てか、こっちこそごめんね。一人の時間邪魔しちゃって、あんなケーキ一個ぐらいしか奢ってあげられなくて。逆に気を使わせちゃったね」

 そう言って浦田さんは、キョトンとして私を見据えた。

 この男(ひと)は本当に、私より3歳も年上なんだろうか?まるで子供みたいな目をして私を見てる。
 
 しかし、そう思った矢先。浦田さんの瞳が不意に年上の男性の表情を見せた。そして私に語りかける声も、いつもよりワントーン低い落ち着いた大人の男性の声に変わった......。

 「沙綾ちゃんが、笑ってくれてよかった」

 さっき心の中で浦田さんを”嫌い”って言ったこと、謝って撤回しなきゃ ーー。

 その声と言葉と、そして浦田さんの目元がフッと緩んだ時に、私の胸は勝手に”ドキッ”と鳴った......。

 この時、ほんの一瞬だけ時を忘れた私だったが、バックの中で緑色に光るスマホのランプに気がついて意識はすぐに現状に引き戻された。

 誰かが私に連絡をしてきた証拠だ。

 優斗......?

 彼のことを考え出した瞬間、私は逃れようのない胸騒ぎに襲われた。

 偶然とはいえ、浦田さんにお茶をご馳走になってしまった......。

 浦田さんは後輩の中でも特に、優斗を疎ましく思っているのは明白。

 その優斗の恋人である私が、彼のライバルの浦田さんとお茶をしたなんて裏切り行為同然。

 どうしよう。私、浦田さんからのお茶の誘いを断れなくて流されちゃった......。

 てゆうか、私。今、優斗に甘えられない寂しさを優しい言葉をかけてくれた浦田さんに、代わりに甘えてしまったというのが本当のところかもしれない......。

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