拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 彼が私の目の前に現れた時、どうしようもないくらい胸がときめいた ーー。
 
 同時に、いつも通りに優しくて誠実な態度のままで私のことを迎えに来てくれた彼に対して、気が咎めた......。

 気がつけば私は心の中で尾を引いていた罪を、何の脈略もなく唐突に彼へ告げていた。

 「優斗、ごめん。私、嘘ついた。百合奈とお茶してなかった。本当は一人でカフェに行ったの......、そしたらそこで偶然、浦田さんと会って......」

 正直に。あるがままの真実を告白した私へ、彼は眉尻の下がった哀愁のある微笑みを見せた。

 「偶然。だろう??」

 「うん......」

 眉尻が僅かばかり下がっていながらも、優斗は私の言葉を信じてくれた。

 「なんで沙綾は、そんなに純真で素直なの?......愛おしくて仕方がないよ」

 彼は、そう言って私の頭をゆっくりと撫でた。
 
 私は彼に頭を撫でられて胸が”キュゥ”っと鳴いたけれど、嬉しい半面それが人前だったことで羞恥心の方が勝り顔が熱くなった。

 「は.....っ、恥ずかしいよ......っ!」

 私は、伏し目がちに小さな声で彼に抗議した。

 すると彼は哀愁漂う微笑みから一転して意地悪な笑みを一瞬だけ見せて、そのあと私の背中に腕をグッとまわして力強く抱き寄せた。

 ーー 駅前に在る、このデパートは日曜日の午後に集客の最高潮を向かえる。

 店内を闊歩する大勢の人々の視線を一気に浴びても、そんなことには全く動じずに彼は私を執拗なまでに強く抱きしめ続けた.....。 

 「沙綾が俺以外の男に抱きしめられたりキスされたりするのは嫌だって、付き合い初めの時からずっと言ってるよね......。浦田さんには絶対に渡すわけにはいかない。だから俺、何があっても沙綾を離さない」

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