拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 ーー もう二度と彼を傷つけたりはしない。


 優斗、本当にごめんね。

 こんな私を愛してくれてありがとう。

 そう、心の中でつぶやいた時。彼から私への永くて熱い抱擁は解かれて代わりに、私達の指先一つ一つがしっかりと繋がれた。

 「行こう?」

 彼は涙袋の膨らんだ甘く優しい笑顔で私に声をかけた。

 「それとも、ここで買い物する?」

 日曜日のデパートは、どのフロアも平日の倍以上賑わっていてスムーズに買い物することが難しい。

 「ううん。すっごく混んでるし、優斗待たせるの嫌だし......」

 私が彼を何気なく気遣うと、

 「そっか......、ありがとう。でも本当にいいの??俺、待つの平気だよ。......今も、ずっと。沙綾の気持ちが100%俺に向くの待ってるし」

 「え......っ」

 「冗談だよっ、傍に居てくれればそれでいい。沙綾の笑顔がたくさん見られるように、俺が沙綾をたくさん愛するから、ずっと俺の傍に居て欲しい」

 私、ずっと優斗の傍に居たいよ。


 買い物をせずに家へ帰ることにした私達は、しっかりと手を繋いで人々の往来をかき分けながら店の出入り口を目指した。

 このデパートの出入り口には、まるで狛犬のように鎮座する青銅のライオン像がある。
 
 本物さながらの迫力で一瞬、怖いと感じてしまうけど。なんだか店の守り神にも思えて頼もしい。

 ーー 優斗を動物に例えたら、ライオンかな??

 金髪に近い薄茶色の髪がライオンの鬣みたいだし、なによりも優斗の心は、まさしくライオンハート。

  芯の強さと、どこまでも私を想ってくれる深い愛情を備えたハート。

  この男(ひと)の事は心底、信じられる......。

 「ん?何?」

 まばたき一つせずに彼を見つめていたら、彼は私の視線に気がついて目を丸くして聞いてきた。

 「優斗を動物に例えると、ライオンに似てるなぁって思ったの」

 「なに?突然」

  彼は不思議そうな顔をしたあと、私に柔らかな笑顔を向けて言った。

 「そっかぁ。でも、俺としては狼に憧れるな」
 
  「狼?」

  狼といえば。一匹狼とか、そういう孤独なイメージ。

  私が、なんとなく彼のイメージには合わないなと思っていると、

 「狼って、一匹狼とかそういう風に言われる事が多いけど実際は、すごく愛情深くて家族を大切にする動物なんだよ......」

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