拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 「さっき駅前のデパートで出口に向かう時、人ごみに揉まれて落としたのかもしれない」

 スマホにはメモリーやデータ、他にも色々情報が集約されているから失くしたら大変だ。

 ましてや、大財閥の御曹司である優斗の情報が流出して悪用されたりしたら一大事!

 「私のスマホからデパートに電話して、サービスカウンターに届けられてないか聞いてみる」

 「ありがとう、沙綾。心配させてごめんね。でも、大丈夫だよ」

 そう言って優斗は笑顔を見せた。

 「え......っ、で、でもっ!」

 「なんとでもなるから。そんなに不安そうな顔しないで......」

 彼は、なだめるように私の頭を撫でた。

 まるで、私の方がスマホをなくしたような感じ。

 なんか、私の方が焦ってる。

 こんな時でも、冷静で余裕がある優斗。

 さっき私にキスした時は、随分と切羽詰まった感じだったのに......。

 スマホより私との一回のキスのほうが大切なの??

 と、不謹慎も聞いてしまいたくなる......。

 こういう時ばかりは。さすがに”キュン”としてはいけないのに。ピンチにも動じずに、余裕を見せる彼の姿に私の胸は鳴いた。

 そういう、彼の男らしいところは好きだけど。少しは私にも頼って欲しい。

 私はいつも。優斗に頼って、守られてばっかりだから。こんな時くらい、彼の役に立ちたい。



 私は急いで、バッグから自分のスマホを取り出した。

 「ありがとう。じゃあ、少し借りるね......」

 優斗は異様に悪びれながら。私からスマホを受け取り、駅前のデパートに電話をかけた。

 幸いにも電話はすぐに繋がって、優斗とサービスカウンターのスタッフが話している内容が私の耳にも聞こえてくる。

 運良く優斗のスマホは親切な、お客さんに拾われてサービスカウンターに届けられていた。

 「俺、今から取りに行ってくるから。沙綾は、部屋で待ってて......」

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