拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 優斗がスマホを取りに行ってる間。私は言われた通りに家で、おとなしく彼の帰りを待っていた。

 たとえ彼が外出中でも。この家には彼の香りと温もりが宿っているから、孤独は感じない。

 そんな空間の中で、思い出す。

 さっきエレベーター脇で交わしたキスを、彼の言葉を.....。

 ”家に着いたら。沙綾の頭から俺の事が24時間、離れないようなキスをするから覚悟して。”

 堪えようもなく。体の中から熱くなる。

 私は待ち切れずに。もっと彼の存在を感じたくて彼の部屋へと向かった。


 いつもは綺麗に整頓されている彼の本棚。

 今日はなぜが一つだけ。一糸乱れぬ本の群れを壊すように、部屋の入り口から一番遠い棚の一番下の端が少しだけ乱れていた。

 ーー 今日。きっと彼は、あそこの本を読んだんだ。

 私は、一角だけ乱れている箇所が彼の行動が起こした現象だと思うと殺風景な部屋の片隅が、そこだけ温まっているような気がして愛おしくなった。

 他の本は綺麗に並べられている分、やけにその場所が目立つ。

 私は、しゃがんで。その場所の本を元のように、綺麗に整頓しようと手を伸ばした。

 すると、本と本の間から白い紙の端ようなものが飛び出していた。

 ーー この時、私には。見てはいけないとか、そういう後ろめたい感情は微塵もなかった。

 だって、しおりだと思ったから.....。

 
 「......」

 私は一瞬、事態を飲み込めず、頭の中が真っ白になった。
 
 しおりだと思った白い紙の端の正体は、古い写真の角だった。

 その写真には。仲良さそうに肩を組み、にっこりと笑っている幼稚園くらいの二人の男の子が写っていた。
 
 「......優斗......君?」

 向かって右側に写っている男の子は紛れもなく。10歳で亡くなった、私の”初恋の男の子”優斗君だった。

 そして。優斗君の隣で笑顔を見せている、この男の子は......。

 彼の笑顔には、幼い頃の面影が色濃く残っていた。

 ”現在の私の恋人”である優斗だ ーー。

 「一体、どうゆうこと......!?」
 
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