真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「待って!! 優花!!」

ーーそう言って、彼は引き止めてくれたのだろうか......。

微かに残る手首を掴まれた感覚。それを頼りに彼の部屋を飛び出した後の事を思い出そうとしても、どうしても記憶に現れるのは、下階に降りるエレベーターの景色と、揺れながら横目に消えていく街の風景だった。

私はパニックになりながら夢中で広務さんの部屋を出た後、逃げても逃げても追いかけてくる恐怖心から、それでも必死で逃げようと都会の雑踏をチープな靴で走った。

呼吸が上がり、声を発するのが苦しくなったとこで転びそうなくらい不安定な姿勢で足を止めて車道に身を乗り出すと腕を振り乱しながら強引にタクシーを止めた。

「出してくださいっ......!」

私は倒れこむようにタクシーに乗り込み、運転手に行き先を告げるよりも先にタクシーの発進を促した。

バックミラー越しに一瞬、私を見た運転手は無言でタクシーを発進させながら行き先を聞いた。

「はい」

明らかにただ事ではない雰囲気の私に全く動じることのない淡々とした運転手の返事。思わず侘しさを覚えた私は脱力感いっぱいに後部座席に身を沈めた。

弱々しくタクシーに揺られながら、目を閉じると瞼に浮かぶのは苦悶の表情で口を噤む広務さんの面影だった。

広務さんのプライドを傷つけた。私が、メチャクチャだったから.......。

あの時、私は自分を騙せばよかった。世界一幸福な女だと。過去の記憶をかなぐり捨てて。

地底に堕ちても私は広務さんのプライドを尊重すべきだった。だって、彼は崇高な人なんだから。

結局、私みたいな女には縁があってはならない崇高な男性......。

ーー極限まで気力を使い果たしたみたい。

ブレーカーが落ちたように。いつの間にか眠っていた私は走行するタクシーの振動で目を覚ました。

めまいを抱えながら、ぼんやりと薄眼を開けてみると目に映ったのは見慣れたダークグレーの空にキラキラと輝く都会のネオンだった。

もうすぐマンションに着く。

......ジーク居るかな??

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