真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
もうこれ以上振り絞る気力などないというのに。

自宅マンションが近づくほどジークの存在が差し迫って来る。

私は一抹の不安を抱えながらスマホを握りしめて、真っ暗な画面を見つめた。

どうして??

ジークには今日、産婦人科へ行くと言ってあるのに。

どうして何も連絡してこないんだろう??

情勢は常に不安定だ。

今日私は一度、広務さんを選び彼のマンションへ向かった。その時ほんの一瞬、約束された未来が垣間見えた。

幸福で胸が満たされた。でも、その幸福の源を探ってみれば、まるで冷たい雨に反射した虹のようなもので、所詮儚い幻想だった。

私はジークと過ちを犯したその日から、広務さんよりもジークを選ばざる得ない運命を歩んでいた。

だから私は今現在音信のない男を求めるように、自分の居場所であるこのマンションに戻ってきた。

「2000円でいいですよ」

どういう思いがはたらいたのか。淡々とした印象のはずの運転手は私が気がつかないうちにメーターを切ってくれていて、ポケットマネーなみの料金で自宅前まで送り届けてくれた。

「あの、でも......」

「いいですよ。気にしないで」

運転手さんは相変わらず、うんともすんともしていない表情をしていた。けれど、こんなに親切な人めったにいない。

私は一生分の感謝を込めた気持ちでタクシーを降りた。

こんなに心温まることもあるんだ。寂れた胸が少し温まった。

それにしても、あのタクシーの運転手さんは、どうして親切にしてくれたんだろう??

ふと、広務さんとジーク以外の人のことを考えた。

それは当然の事。本当の思いやりや愛って、こういうさりげない行動とか、ささやかな日常に宿るものなんじゃないかな。

私はいままでそういうことに気がついてなかった。

本当の愛。幸せ。

もしかしたら。それは今あるものより、これから作っていくものなのかも......。

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