真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
ーーそうは言っても。

伴侶となる男(ひと)が定まらなければ、あるいは二人で未来を作るのか否か、定まらなければ本当の幸せは手に入らない。

随分遠回りして来たけど。ここに来て、なんとなく悟りめいた事を言い出してしまっているのは、ようやく受診した産婦人科と帰りのタクシーの運転手さんのおかげ。

こんな風に思いながら。私は自宅マンションまでの短い距離を狭い歩幅で歩いていた。

歩幅が狭いほど自宅までは時間がかかる。その間にジークから連絡が来るかもしれない。

悟りめいた事を偉そうに語りながら、やっぱり私は怖がりだ。そう改めて悟った時、マンションの入り口あと5メートルのところで足を止めた。

ーーバッグの中でスマホが鳴ってる......。

「病院どうだった?? 早く連絡したくて仕方がなかった。でも、こんなに遅くなってしまって、ごめん......。今どこにいるの?? これから会えないかな?? 会いたい」

微細な振動を何度も繰り返しながら、スマホは断続的に言葉を紡いでいく。

ジークからのLINE。

そう確信した途端、肩から力が抜けた。

彼に会わなきゃーー。

私は目前に迫った自宅マンションのエントランスの明かりの奥に目を凝らした。

ガラス扉の奥に敷かれた乳白の石畳。毎日往来する空間に、これまで感じた事のない感覚を覚えた。

生温い緊張感。

こういう、おかしな感覚を与えている事を彼は自覚しているんだろうか?

私は自制が効かない混沌とした苛立ちの感情の赴くままに、ややぶっきらぼうに前を見据えた。

ぼうっと背後に延びる白黒つかない朧な影。その影を生み出していた人物こそ、黒革のビジネスシューズを履き、ネイビーの3ピーススーツを纏った男......ジークだった。

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