私、今日からお金持ち目指します?
だから罰が当たったのだろう。無事に大学入学を果たしたものの……入学と同時に現実を見た。

みんな恐ろしく上手かったのだ! もう、天と地ほど違った。
好きだけではプロになれない、と悟った瞬間だった。

それからの私は、絵は趣味、と割り切り、それでもちゃんと大学は続け、卒業した。そして、約束通り、卒業後は店に従事し、来月でちょうど一年となる。

「店は閉めないが……」

父の返事にホッとするものの、言葉の歯切れが悪い。

「閉めないが、何?」
「冬夏に経営セミナーを受けてもらおうと思う」

はい?

「お父さんが学んできたことを、この一年、色々と教えてくれたじゃない!」

「ああ、でも、時代がな……」と言いながら、目が泳いでいる。

「とにかくだ、この際、冬夏に経営を任せようと思ってだな……まぁ、何はともあれ、よろしく!」

何がよろしくだ! この窮地から逃げ出すつもりだな。
三代目は身上を潰すと言うが、父も類に漏れずだったようだ。

「申し込みも、もう済ませてある。明日からだ、遅れずに行くんだよ」

明日ぁぁぁ! 私が抵抗できないように、図ったな!

聞けば、セミナー会場は、結婚式場や有名なレストランが入っている著名なホテル『KOGO』だった。

まさか、と思い父に訊ねる。
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