私、今日からお金持ち目指します?
「優先順位は常に一定ではありません。その時その場所で、何が一番かを即断即決し、行動するのです。ですが、これは一長一短でできることではありません。過去の経験や知識を必要とするからです」

だったら、経験も知識もない私には無理だ。

「それは年を重ねているからとか、院を出ているからとか、そういうレベルのものではありません。次元が違います。いかにトップクラスの人たちと多く接してきたか、ということです」

「それは偏見では?」

巴女史が言う。

「そうですね、そう思うのが普通ですね。でも……」

上条勝利が会場を見渡す。

「富豪になりたかったら、普通と言われる思考は捨てることです。何の役にも立ちません」
「俺さぁ、時々、上条さんの言っていることが分からないだけど……」

山下さんが日下部に小声で言う。だが、私にも聞こえた、ということは……案の定だった。上条勝利が山下さんに向かって、「君の言葉は正しい」と言う。

「うわっ、あっ、すみません!」

テンパる山下さんに上条勝利が微笑みかける。

「何を謝っているのだい。正しいと言っているのに」

否、その笑みが怖いのだよ、とツッコミそうになる。
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