君の思いに届くまで
琉が帰ってしまった後、マミィとお茶を飲んでいた。

「琉に連れていってもらったカフェはどうだった?」

「とても素敵なカフェだったわ。チョコケーキがおいしいの」

マミィにチョコケーキの大きさを手で示しながら笑った。

「そう、よかったわね」

琉との楽しくてドキドキした時間を思い出しながら、このまま離ればなれになって会えなくなってしまうと思うとふいに泣きそうになる。

ふぅとため息をついたまま、ティカップに視線を落とした。

「ヨウ、どうしたの?何か気になることがあるなら言ってごらんなさい」

マミィは優しく私の頭を撫でた。

「あのね」

言ってしまっていいんだろうか。一瞬躊躇った。

「なに?遠慮なく言いなさい」

マミィは躊躇う私の目を見て優しく微笑む。

「あのね、少しの間だけロンドンに行ってきてもいい?」

マミィの手が止まった。

恐る恐るマミィの顔に視線を上げた。

当然のことながらマミィはとても困った顔をして首を横に振っている。

そうだよね。

大事な留学生を預かってるのに。

ロンドンに一人で行かせるなんてできっこない。

「それは、琉を追いかけていくってこと?」

マミィの口から琉という名前が出たことに驚く。

「ど、どうして?」

思わず上体を起こして聞き返した。

「だって琉はロンドンに住んでいて明日帰るって聞いていたし、さっきまで琉と一緒に過ごしてたんだから気づかなわけがないわ」

そっか。

私だけが全てをわかってる大人の間であたふたしてるみたいだった。

「やっぱり駄目だよね」

私は首をすくめてまたうつむいた。

「ヨウ」

「ん?」

マミィは私の手の上にそっと自分の手で柔らかく包んだ。

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