君の思いに届くまで
明るい街の光に照らされた琉の顔が近い。

ようやく琉の表情をはっきりと見ることができた。

会わなかった期間はほんのわずかなのに、とても懐かしくて恋しい顔。

琉は潤んだ目で私をじっと見つめている。

その続きを期待しながら私も必死に見つめ返した。

琉の吐息を私の頬が敏感に感じる。

「とりあえず腹ごしらえしなくちゃな」

そう言うと、琉の顔が私からすっと離れた。

体の中心がまだドクンドクンいってる。

これは大人のやり方?

翻弄されるってこういうこと?

キスされるかと思った自分が少し恥ずかしい。

だけど、さっきの潤んだ琉の瞳はキスよりもずっと甘くて・・・。

私達は甘い余韻が残った車を降り、近くのカフェに入った。

カフェの入り口には色とりどりの花が飾られていてとても美しい。

日本で見る花の鮮やかさと違って見えるのはどうしてだろう?

それはこのイギリスの空気のせい?

それとも、琉が存在してる世界のそばだから?

入り口の花を見つめながら琉の後に続いた。

メニューを見てもちんぷんかんぷんな私は琉と同じものを頼んでもらった。

ウェイターが私と琉の前にドンドンと大きなお皿を置く。

へ?

その大きなお皿にはこれまたお皿からはみ出すほどに大きなローストビーフが三枚も重ねられていた。

そして、そのローストビーフの横には更に山のようなマッシュポテト。

「これ・・・まさか一人分でなんでしょうか?」

そのお皿に圧倒された私は思わずのけぞって琉に尋ねた。

「もちろん」

琉はにっこり微笑むとナイフとフォークを持って品良くスピーディに肉を切り口に運んだ。

「ん、うまい」

そう言いながら併せて頼んでいたノンアルコールビールをごくごくと飲む。

おいしそうに食べる琉を見てたら、またお腹が鳴りそうになった。

慌てて私もローストビーフを切り分けて口に入れた。

う、「おいしい」

口いっぱいにジューシーなビーフが染み渡る。

しっかり咬まないと喉に詰まりそう。

私もビールを口に流し入れた。

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