君の思いに届くまで
健と待ち合わせの居酒屋についた。

待ち合わせ時間5分前だったけど、やはり健の姿はなかった。

忙しいもんね。営業部のホープだもん。

いつものカウンターに腰掛けると常連の私に気付いた大将がカウンター越しに声をかけてきた。

「いらっしゃい。久しぶりだねぇ。今日は一人?」

「残念ながら一人じゃないわ。もうすぐ連れが来るの」

「はいはい、いつもの男前のボーイフレンドかい?」

「そうね。男前は余計だけど」

「あいつを男前と呼ばずしてどうすんだい。男前見過ぎて目がおかしくなっちゃたんじゃないの?」

大将は突き出しを二つカウンターに置いた。

「大将の方が男前だわ」

私は笑いながら大将に向かって親指を立てた。

大将は、「ほら、目がおかしくなっちゃってるよ」と困った顔をして厨房に入って行った。

「ごめん、待たせたな」

大将と入れ違いに、私の横にどかっと座ったのは健だった。

健とはいつ以来だろう。

相変わらず、濃紺のスーツがよく似合ってる。

慌ててきたのか、額がほんのり汗ばんでいた。

「生中でいい?」

「うん」

健はすぐに生中二つ頼んだ。

上着を脱いで背もたれにかけ、バッグを足下に置く健の横顔を見つめながら、大将の言うように確かにイケメンの部類に入るのかもって思う。

学生の頃は結構もててたもんね。

もっぱらバスケ命で泣かした女子は数知れずだったけど。

会社でももててるんだろうか。卒業してからの健の女性関係は全く知らなかった。

私も興味がないからそういう話しなかったし。

会う時は大抵私の失恋話、恋の話ばかりを一方的に聞いてもらってたもんね。



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