君の思いに届くまで
街は夕暮れ時。

切ない時間。

二人でこうして一緒にいられる時間が訪れるなんて、つい最近までは思いもしなかった。

「家まで送るよ」

だけど、そんな時間も今日はおしまい。

また二度と会えなくなるんじゃないかっていうくらいに、胸が苦しい。

あの日、空港まで車で送ってもらったっきりだったから。

自分にはちょっとしたトラウマになってるのかもしれない。

自分の家が近づいてくる。

もうすぐ家というところまで来て車は路肩にゆっくりと停車した。

琉は正面を向いたままじっと一点を見つめていた。

「峰岸教授?」

しばらく黙ったままの琉の顔をのぞき込む。

琉の切ない眼差しが私の方に向けられ、気付いたらその胸に引き寄せられていた。

胸の鼓動が直に私の体に伝わってきた。

とても強く熱く激しい鼓動。

琉だ。

紛れもなくあの日の琉。

「ヨウ、君にキスしたい」

琉が私の耳元で押し殺したような声で言った。

「自分でもよくわからないけど、ものすごい勢いでヨウに惹かれていくんだ」

私の返事を待たずに琉は私と唇を合わせた。

体中に電気が走る。

もう止められない。

私は琉の背中に自分の腕をしっかり回した。

誰に見られたって、誰にどう思われたって構わない。

5年経った今も私の中にはずっと琉がいた。

琉の中にも私がいたの?それは5年前の私?



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