君の思いに届くまで
何かを必死に確かめ合うような長いキスだった。

琉の手の平が私の頬を包む。

そして唇がゆっくりと離れていった。

「自分の立場をわきまえず、こんな事をしてしまってごめん」

頬を包む琉の手にそっと自分の手を重ねた。

「大丈夫です。今のキスは、」

言い掛けて、ためらった。

「何?」

優しい眼差しで琉は私に尋ねる。

「今のキスは、いつの私にしたんですか?」

琉の視線がふっと落ちる。

「今の君だ」

そうだったんだ。

5年前の私が琉の中から溢れてきたんじゃなかったんだね。

「ヨウ、君を好きになってもいいかい?立場上、面倒なこともあるけれど」

私は涙を堪えて必死に微笑んだ。

「ええ。もちろんです」

「ありがとう」

そう言うと、琉はまた私をしっかりと自分の腕の中に抱きしめた。

今の好きの気持ちは届いたけれど、過去の好きには届かない。

その思いは今の出会いとは比較にならないほど愛しくて、切なくて、激しくて。

琉の知らない琉がいた場所。

私だけが知ってる時間。

「もしよかったら、俺の家に来ないか?」

琉の腕が一層強く私を引き寄せる。

「峰岸教授の家に?これからですか?」

「非常識だと思うけれど、今からでもずっと一緒にいたい。君の思いに少しでも届くようそばにいたいんだ」

琉の熱い頬が私の耳を塞いでいた。

その気持ちは、私に沿いたいと必死に足掻いているようにも感じた。

琉も私と同じ、それ以上に苦しんでる。

一緒にいたい。

私だって、この5年間を埋めるくらいにそばに寄り添っていたい。

「はい」

私は言いながら、しっかりと頷いた。




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