くるみさんの不運な一日
「水戸君、いい加減にしたまえ」

――奥のデスクにいる課長。


ハッとして課長の方に目を向けると、口許は笑ってるけど目は怒ってて、こめかみの血管がピクピクしてるのが分かる。


「す、すみません」

慌てて電話を切ったあたしに、課長は怖い笑顔のままこっちに来いって手招きする。


最悪だ、お小言だ、もう本当今日はツイてないって思いながら、重い足取りで課長の席にイソイソと近付くと、目の前に名刺が入ったケースを差し出された。


「これ、渡してきて」

「……はい?」

「頼まれてた新しい名刺。出来たから。経理の山越君と営業の天川君」
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