くるみさんの不運な一日
「はい!?」

「渡してきて」

「あたしですか!?」

「君しかいないだろう」

「な、何で!?」

「今、私用電話をするくらい暇そうにしてるのが、君しかいないって言ってるんだよ!」

バンッ――と勢いよくデスクを叩かれて、肩を(すく)めてチラリと周りに目を向けると、確かにみんな忙しそうに何やら仕事に取り掛かってる。


自業自得って言葉がグルグルと頭の中を回ってる。


だけどどうしてこんな日に限って、天川智明の名刺を持っていかなきゃいけないんだと思う。


今朝、逃げてきたのに。


お金も払わず逃げてきたのに。
< 45 / 247 >

この作品をシェア

pagetop