素直になれない、金曜日
砂川くんの口にスプーンを押し込んだ。
彼が咀嚼して、ごくりと飲み込んだのが喉元の動きでわかる。
ついさっきまでとは違う緊張が身体を走った。
ちゃんと美味しくできてるかな、と不安に思ったのも一瞬だった。
「美味しい」
敢えて私に聞かせようとするでもなく、ぽろ、と砂川くんの口からごく自然に零れた言葉。
そのトーンがお世辞じゃなく本音だということを示していて。
「ほんと?」
ほっと胸を撫で下ろすと同時に嬉しくて頬が緩む。
「なんか、優しい味がする」
「優しい……?」
優しい味ってどんな味なんだろう。
ぴんとこなくて、首を傾げていると。
「うん、俺の好きな味」
砂川くんの、いつもより糖度を含んだ声。
今、『好き』だって。
きゅう、と胸が甘く締め付けられた。
迷ったけれど、作ってよかった。
レシピアプリさまさまだ。心の中でありがとう、と感謝した。
「ごちそうさまでした」
しばらくして、手を合わせた砂川くんの目の前のお皿は、お米一粒さえ残っていない。
綺麗に完食してくれたことが嬉しくて。