素直になれない、金曜日
あのときは本当に心臓が飛び出そうだった。
今私が砂川くんにしているのはあのときと同じこと。そう思うと、急に恥ずかしくなってきて。
ごまかすように、ぱっと顔を上げると砂川くんの唇が視界に飛び込んでくる。
「っ、」
それと同時に呼び起こされた記憶は、あの日の電車の中での─────。
思い出すだけで、頬が熱を持ったのがはっきりとわかる。
わたし、砂川くんとあのときほんとうにキス、しちゃったんだよね……。
信じられないけど、本当のことだ。
思い返すたびに、心臓が忙しなくて、頭の中がぐるぐるして冷静じゃいられなくなるから あの日以来あのことはなるべく思い出さないようにしていた。
なのに、今に限って鮮明に蘇ってきて。
この距離の近さとか、温度とか、漂う香りだとか、全部あのときとそっくりで、くらくらしておかしくなりそう。
勿論、砂川くんの中では、あの日のことは単なる事故の一つとして処理されているはずで、もう既に記憶から消えてしまっているかもしれないけれど。
私はきっと、いつまでも忘れられない。
砂川くんと私の想いの温度差に、胸の奥がきゅ、と狭くなって、それが少し切なくて、そのどうしようもない気持ちの行き場を探るように。
「ん、」