素直になれない、金曜日

足元がすくわれたような気がして、急に怖くなった。



「……っ」



ここで逃げるのが、いちばん卑怯だって心のどこかではわかっているはずなのに。

この胸の苦しさから逃れたくて、砂川くんへの抑えられない恋心から逃げたくて、空き教室を飛び出した。



「おい、ひより!」



一部始終をみていた恭ちゃんが、後ろから慌てたように追いかけてくる足音が聞こえる。


苦しい。


砂川くんへの想いが膨らみすぎて、大きすぎて、苦しい。


好きすぎて、苦しいの。



この気持ちを簡単に忘れられたらいいのに、と思うけれど、大切にとっておきたいと思うのもたしかだ。


だって、私の中から砂川くんの存在がなくなってしまったら、もうそれは私じゃない気さえする。



頭の中がぐちゃぐちゃになりながら、走ってその場から離れることしかできなかった私には知る由もなかったんだ。





────「結局、振り回されてるのは俺だけ、か」




ぽつりと床に落とされた砂川くんの独り言なんて。



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