素直になれない、金曜日


「……やっぱいい、聞きたくない」

「っ、」




そ……っか。聞きたくない、か。

素っ気ない物言いに、胸が針で刺されたようにちくちくと痛んだ。


また訪れた沈黙に抗うこともできず、黙々と塗り進めていると。




─────ガラガラッ。




「ひよりー?」




突然勢いよく扉が開いて、そこから顔を覗かせたのは恭ちゃんだった。




「恭ちゃん、どうしたの?」

「いや、そろそろ帰らねーかなって思って」



そう言われて改めて見ると、恭ちゃんはもう荷物を纏めた鞄を手に持っていた。




「もうそっちの作業は終わったの?」

「ああ、さっきな」



恭ちゃんは頷いてみせたけれど。



「まだこっちの作業は終わってなくて──」




だから先に帰ってて。

そう言おうとした私を遮ったのは砂川くんだった。




「いいよ、帰りなよ」




え……? 帰りなよ、ってそんなの。




「でも、まだ今日の作業が」




そんな簡単に帰るわけにはいかないよ。

首を横に振ってその場に残ろうとしたけれど、それを拒絶したのは砂川くんの方で。




「桜庭さんは帰りなよ」

「……え? でも」




「……桜庭さんといると、疲れるんだよ」

「っ!」




苦しげに吐き出した砂川くんの小さな声に、胸が絞られるような気がした。


そんな表情をするまで砂川くんを苦しめているのは、もしかして、私なの?



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