素直になれない、金曜日



軽く息をついてホウキを手に取った。



プリント配り、ノートの回収、
日直の仕事に掃除当番。



入学してから一ヶ月ほどしか経っていないのに、気がつけば面倒な仕事────いわゆる “雑用” は全て私に回ってくるようになっていた。



それもそのはず。



誰もが面倒だと思う仕事を頼まれて
首を横に振ることができない私は


雑用の絶好の押し付け先だもの。





嫌がらせでもいじめでもないんだ。





頷いたのも、受け入れているのも
今ホウキを握っている私自身なんだから。




そんな自分自身を映す窓の奥に、先ほど教室を去っていった榎木さんたちが楽しそうに校門から出ていくのが見えた。




また合コンに行くのかな。

それともカラオケ?

もしかしたら、駅前に新しく出来たカフェに行くのかもしれない。





いずれにせよ、なんてきらきらしているのだろう。

彼女たちが住む世界は、明るくて、眩しくて、私には直視できない。






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