素直になれない、金曜日



「私たちの代わりに、教室掃除やってくれないかな?」




あざとく小首を傾げながら、私に顔をぐっと近づける。

榎木さんのその笑顔が薄っぺらい上辺だけのものだなんて、誰に言われなくてもわかっている。



わかっているけれど、気づかないふり。





「……うん」

「助かるっ!ありがと、桜庭さん!」




こくりと頷いた私に、彼女はぱあ、と満面の笑みを零す。

────もちろん、上辺だけの笑顔だということには変わりない。




「じゃあっ、ソレよろしくね〜!」




彼女は教室の隅に置かれたホウキとチリトリを指差して、それからたくさんのお友達を連れて教室を軽やかな足取りで去っていった。



彼女が教室を出ていく直前、私の視界の端で揺れた明るい茶色の毛先。



嘲笑うようになびいたそれを
羨ましい、なんて、私は思わない。




────思わないようにしている。





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