素直になれない、金曜日

熱は一日休むとすぐに下がったけれど、その後も心はまだぎゅうぎゅうに縛られたままだった。



学校なんて行けない

誰の顔も見れない

自分の顔だって─────見たくない。




布団のなかに潜り込んで、はじめてお母さんに嘘をついた。





『まだお腹痛い、行けない』





罪悪感は増すばかりだった。
ほんとうは嘘なんて、つくつもりじゃなかった。

だけど、大嫌いな醜い自分の姿を誰かの目に晒したくないと思った。




それを三日くらい続けたところで、私の嘘を見破ったのは恭ちゃんだった。



くるまっていた掛け布団を剥ぎ取って恭ちゃんは、私を叱った。




『嘘つくな、阿呆』


『行きたくないなら下手な嘘なんて吐かずに 正直に理由を言ってからにしろ。嘘ついて逃げるのは違えだろ』




厳しい口調でそう言われて、結局私は学校に行くことにした。



恭ちゃんには感謝しているんだよ。



ああやって誰かに言われなかったら、私はいつまでもずるずると甘えていただろうから。


学校が嫌いなわけでも、そこにいる人たちが嫌いなわけでもなかったから。

むしろ、好きだったから。



それをわかっていたから、恭ちゃんだってああいう風に言ったんだと思う。





だけど、だけど。




< 94 / 311 >

この作品をシェア

pagetop