素直になれない、金曜日
熱は一日休むとすぐに下がったけれど、その後も心はまだぎゅうぎゅうに縛られたままだった。
学校なんて行けない
誰の顔も見れない
自分の顔だって─────見たくない。
布団のなかに潜り込んで、はじめてお母さんに嘘をついた。
『まだお腹痛い、行けない』
罪悪感は増すばかりだった。
ほんとうは嘘なんて、つくつもりじゃなかった。
だけど、大嫌いな醜い自分の姿を誰かの目に晒したくないと思った。
それを三日くらい続けたところで、私の嘘を見破ったのは恭ちゃんだった。
くるまっていた掛け布団を剥ぎ取って恭ちゃんは、私を叱った。
『嘘つくな、阿呆』
『行きたくないなら下手な嘘なんて吐かずに 正直に理由を言ってからにしろ。嘘ついて逃げるのは違えだろ』
厳しい口調でそう言われて、結局私は学校に行くことにした。
恭ちゃんには感謝しているんだよ。
ああやって誰かに言われなかったら、私はいつまでもずるずると甘えていただろうから。
学校が嫌いなわけでも、そこにいる人たちが嫌いなわけでもなかったから。
むしろ、好きだったから。
それをわかっていたから、恭ちゃんだってああいう風に言ったんだと思う。
だけど、だけど。