素直になれない、金曜日
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火曜日は、毎週巡ってくる。


砂川くんのことが好きだと気づいてからは、図書当番のある火曜日と金曜日はなんだかそわそわしてしまうんだ。



はやく昼休みにならないかなあ、なんて浮ついた気持ちをごまかすようにシャーペンの芯をカチカチ、トントン出したり入れたり。



そんな傍から見れば挙動不審な私に声をかけたのは、担任の先生だった。




「桜庭ー」




手をとめて顔をあげれば、“ちょうどいい奴を見つけた” とばかりに私を見つめる担任の先生の姿。



思わず、唾をごくりと飲み込んだ。


だって、これから彼の言わんとすることなんて見え透いているもの。




「この資料、数学準備室まで運んでおいてくれないか?」




ほら、やっぱり。

こうやって先生が私に話しかけるときは 大体面倒なことを押しつけたいとき。



そろそろパターンは読めてきた。

それでも。




「……はい」





私には “断る” という選択肢はない。




7月に入った。

今年は例年にもましてうだるような暑さで、クーラーの効いた教室からはなるべく出たくない。


ましてや重い資料なんて運びたくない。
数学準備室……遠いし。


面倒なことばっかり押し付けないでよって、心の中では一丁前に文句ばかりで。






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