包み愛~あなたの胸で眠らせて~
「怖くないならよかった」

「うん。紗世……」

「えっ、なに?」

「触っていい?」


触る?

どこを?

真っ直ぐと見る広海くんからの要求は思いがけないものだった。戸惑ってしまい、すぐ返事ができない。


「いきなりすぎだよね。ごめん」

「あ、ううん。大丈夫だよ。どこでも好きに触って! あ、いや、ううん、あの、えっ!?」


どこでも好きにって……ものすごい大胆なことを言ってしまった。

自分で言ったことを撤回したいようなしたくないような複雑な気持ちになり、しどろもどろと言葉が続かなくなったのに……広海くんは私を引き寄せて、抱き締めた。

触るってこういうことだったの?

これまた突然のことに私は動きを止めてしまった。

私の肩に顔をうずめる広海くんから微かな震えが伝わってきた。

私も広海くんの背中に腕を回して、同じように抱き締める。

触れることで安心できるならずっと抱き締めていたい。抱き締めることで、辛かったことを忘れられるなら何度も抱き締めてあげたい。

広海くんは大切な人だから、すべてにこたえたい。
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