包み愛~あなたの胸で眠らせて~
結果、そういう性格があだとなったのだけれども。


「紗世、どうした? それ、何か変なものでも入っているの?」

「えっ? あ、ううん。辛口でいい? 甘口がいい?」


焼き肉のたれを持って、ぼんやりしていた私は広海くんの声で我に返った。


「辛口でいいよ。何か考え事? 困ったことでもあるなら言ってよ」

「ううん、何もない。大丈夫」


大丈夫、大丈夫。人に心配されると大丈夫といつも答えていた。

自分にも大丈夫と言い聞かせていた。そうすることが最善だと思っていたからだ。


「なんかさ、紗世は無理しているように見えることがたまにあるんだけど、本当に大丈夫?」

「無理? 無理してやっていることなんて何もないよ。無理だなと思ったらやらないもの」

「んー、それならいいけど、何かあったら言ってね」

「うん、ありがとう。あ、そうそう! 食べながら、アメリカの話をしてもいい? 私、1年間留学していたんだよ」

「留学ってアメリカに? 大学の時だったらもう俺はいなかったな」
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