包み愛~あなたの胸で眠らせて~
確かに広海くんは出る前に私のところに来た。それは私にメールに添付したファイルにデータ入力を頼んだメールのことだった。

いつまでと期限が書いてなかったから、返信で問い合わせた、その返事をメールではなく、直接言いに来ただけのことだ。

耳元といえば耳元かもしれないけど、囁く声ではなかったし、私は頬を赤くしていない。

噂話というものは誇張されることが多いけど、業務の話をしただけで妬みの対象になるのは迷惑だ。


「業務の話をしただけだし、頬を赤くした覚えはないんだけど」

「そうなんですね。先週は避けるようにしていたのに今週は一緒に出社してくるし、片瀬さんが機嫌よく返しているから何かあったのかとみんな勘繰っているようですよ」

「別に機嫌よくしてもいないけど。噂好きの人が多いんだね」

「で、ここだけの話をもう一度聞きます。本当に同級生という関係だけなんですか?」


星野さんには同級生だと話したが、同じマンションの同じ階に住んでいるとまでは話していない。さすがにそこまで接点があると話すと、星野さんでさえも勘違いするのではないかと思って、話せない。
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