包み愛~あなたの胸で眠らせて~
「もうアジサイが咲いているね。どの色もきれい」

「本当だ。アジサイを見ると梅雨を連想するけど、そろそろ梅雨入りしそうだよね」


通り道のある雑貨店の小さな庭に青、紫、白といった色のアジサイが咲いていた。

今日の天気予報は晴れのち曇りで、下り坂になっている。沖縄はもう梅雨入りしているから、関東も来週くらいにはするだろうと予想されていた。

ふと広海くんが持っている傘を見て、私は慌てた。

「ああ! 傘忘れちゃった。夕方から降るって言ってたよね。どうしよう……昼休み、コンビニで買ってこようかな」

「俺、ロッカーに折り畳みを入れてあるから、貸してあげるよ」

「わ、助かる! 広海くん、ありがとう」

「ううん。でも、どうやって渡そうか? 堂々と渡してまた何か言われても困るよね」


傘の貸し借りなんて、友だちならよくあることだけれど、今は安易に出来ない。なぜか注目されてしまっている私たちがやったら、また何か言われるかもしれない。

歩きながら、私たちは無言で何か良い方法がないか考えた。
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