包み愛~あなたの胸で眠らせて~
「傘持ってきていない、どうしようと片瀬さんが困ったんですけど、私も予備の傘がなくて、ちょうど通りかかった池永さんに私がどこかで傘を借りれますかね?と聞いたんです。そしたら、池永さんが自分のを貸してくれるって、言ったんですよ」


隣の課にいるはずの星野さんが良いタイミングで現れた。星野さんの手には、一枚の紙が握られていた。

何かの用事で来たのだろうけど、ものすごく機転の利いた言葉に驚いた。私はホッと胸を撫で下ろす。

助かった……。

星野さんに、あとで何かを奢ろう。

星野さんからの言葉を聞いて、堀田くんが目を輝かせた。


「そうなんですね! たまたまでも通りかかったのが池永さんで良かったですね。池永さんは一見冷たそうに見えますけど、とても優しい人ですよね。いつも的確に教えてくれるので、俺も安心していろいろ聞けます。そんな池永さんだから、困っている片瀬さんにも優しくしたんでしょうね」


堀田くんはうんうんとひとりで納得しながら、話した。

堀田くんのひと言で注目を浴びるはめになってしまったが、今度は堀田くんの話で救われる。

何も計算しないで話す堀田くんは正直者だ。感じたままを話す。それは彼の長所だけど、少し考えてから話して欲しいとも思うこともある。
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