包み愛~あなたの胸で眠らせて~
星野さんと堀田くんの話を聞いて、大したことではないと判断した人たちが業務へと戻る。例の人たちも同じように動いていたが、まだ油断出来ない。

彼女たちの冷たい視線が刺さっていたからだ。話を聞いても納得していないようだった。今は何も言わないが、また何かあったら言われるかもしれない。

手に汗を握る。この先何事もなく穏やかに過ごせることを祈るのみだった。

結局夕方からの雨予報は外れて、この日の雨は日付が変わる前から降り始めた。借りた傘の出番はなく、翌日返した。


この日から1週間が経過した日の午後、祈っただけで穏やかに過ごせるわけがないと思い知らされる出来事が起こる。

それは、一本の電話から始まった。

電話を取ったのは堀田くんだった。第一声を発したあと、狼狽えた応対をしだした。受け答えから相手は外国人だと推測する。

堀田くんは英語が苦手だと言っていた。だから、助けを求めるように周囲に目を向ける。しかし、誰一人として動かないどころか、目を合わせようとしなかった。

この課でスムーズに英語が話せる人は、確か六人だった。その六人は今、いない。
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