包み愛~あなたの胸で眠らせて~
いつまでもここにいるのが辛くなり、私は走り出した。制止しようと伸ばした広海くんの手は空を切る。

追いかける足音が聞こえたが、振り向かないで廊下を走り、非常階段へとつながるドアを開けた。走る足音が近づいてきたから、急いで閉める。

冷たいドアにピッタリと体をつけて、開けられないように力を入れた。


「紗世! 開けて」

「広海くん、ごめんなさい」

「何を謝っているのか分からない。とりあえず、開けて」

「嫌だ」


広海くんはドアを押すが、少ししか開かない。

男である広海くんが思いっきり力を入れれば開くだろうに、彼はそこまでしようとしない。私に自ら開けさせようとしているのだろう。

だけど、私は断固拒否した。

嘘をついた私は絶対広海くんに嫌われた。こんなひどい自分を見られたくはない。

こんな私に泣く資格なんてないのに、涙が滲み出てきて視界がぼやける。


「紗世、開けて」

「やだ……」

「開けないのなら、こっちから開けるよ。押すから気をつけて」

「や、やめて」
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