包み愛~あなたの胸で眠らせて~
ここまで時々相づちを打つくらいで静かに聞いていた広海くんが疑問を口にする。

正社員でなく派遣社員になったのには理由がある。

トラウマを克服出来たと思っていたが、それは思い込んでいただけだった。他人の目が怖く、面接官の目も怖かった。偉そうに言ってと思われるのではないかと考えると何も言えなくなった。

最終面接まで残っても、そこで自己アピールが出来なかった。言葉に詰まって、うつむいた私は不採用の連絡をもらう。

それが何度か続き、正社員での就職を諦めて派遣社員になった。派遣社員は指示されたことをやればいいから精神的には楽だった。


「言われたことだけをやっていれば、目立たないし、妬まれもしないと思ったの……」

「そうか……。そういう理由があったんだね」


私は今日言われたことを思いだし、両手を膝の上で握りしめた。震えないようにとしたけど、微かに震えてしまう。

嫌われたくない、無視されたくない……。


「広海くん……」

「辛かったね。我慢して無理をするのも大変だったよね。少しでも話してくれたら力になれたかもしれないけど、辛いことはなかなか言えないよね」
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