不器用な殉愛
「あなたの助けがあったので、こちらの損害が少なかった面も否定できません。本当に——あなたと、ヒューゲル侯爵、ああ、彼は今日の主役でしたね」
「皆が、あなたのように思ってくれているのなら少しは気が楽になるのですけれど。ありがとう、ここまでで十分よ」
部屋の前でいらいらしたようにジゼルが待っている。
「あら、あなたがディアヌ様を護衛してくれるとは思わなかったわ」
「ルディガー様には、宴の場に戻ってもらわないといけないからな」
「——そうね。ディアヌ様、お部屋を温めておきました。まだ、夜になると冷えますからね」
ノエルにはそれ以上かまわず、ジゼルはディアヌを部屋の中に導こうとする。
「ノエル——もし」
そこで一瞬ためらった。けれど、意を決してもう一度口を開く。
「もし、私が必要なくなったら——あなたは、手を貸してくれるかしら」
「またそのようなことを!」
ジゼルは慌てて割って入ったけれど、ノエルは丁寧に一礼した。
「もし、その時が来たならおまかせください」
「さあさあさあ、もう部屋に入りますよ。その重い宝石も外してしまいましょう。それから身体を温めるお飲み物を」
ノエルが顔を上げた時には、もうジゼルはディアヌを部屋に押し込んでいる。だが、いざという時ノエルが手を貸してくれるというのなら——少しは、安心できるような気がした。