不器用な殉愛
もし、この城に戻った後に処刑と言うことになるのであれば、今回も見届けるつもりでいる。以前、父ともう一人の異父兄を見送った時のように。
「国境の警備に行かされて、母の死に目に会えなかったことを悔いていたようで……その、僭越だというのもわかっているの……ですが……」
もじもじと、スカートを掴んでこね回す。自分の行動は、たしかに出すぎたものなのだろう。侯爵が、ルディガーと共に行くことを望んでいない可能性もある。
「わかった。侯爵が望むなら、連れて行こう。彼が側にいてくれるのなら、俺も心強い」
侯爵の望みは、シュールリトン王家の滅亡。ジュールがいなくなれば、彼の目的も達成されるはずだ。
「他に言いたいことはないか」
「どうか……どうか……無事に、戻ってきてください」
——もっと強かったなら。ひょっとしたら彼と一緒に行くことができたかもしれない。
何もできない自分が嫌になる。いつだって、そうだ。周囲の人に守られてばかりで。
「ルディガー……」
口にしてはいけないと思っていた名が、口をついて出る。
「お前は、心配性だ」
子供の頃、何度も抱きしめられたみたいに、背中に回された腕に力がこもる。もう片方の手で頭をぽんぽんと撫でられたら、泣きたい気分に陥った。
「俺は、死なないし、怪我もしない。何も心配する必要はないんだ」
胸が締め付けられるようで、涙が溢れそうで、その涙を懸命に抑え込む。待っているしかできないなんて、なんて無力なのだろう。