不器用な殉愛

 

 ◇ ◇ ◇

 

 シュールリトン王家の血が絶えた。その知らせは、あっという間に国中に広がった。

 ジュールの遺体は、父と弟が葬られている場所に葬られた。今回もディアヌはジゼルと二人で墓穴を掘った。

「終わった……わね。院長は、私が一緒に戻ることを許してくれるかしら」

「さて、どうでしょう——ただ、当初の計画は難しいのではありませんか」

「そうね……」

 ルディガーに結婚の申し込みをした時、二年間の白い婚姻を結ぶようにと頼んだ。そのあとは、シュールリトン王国の残党と結んだとしてディアヌを離縁すればいい。生涯修道院に幽閉すればいい、と。

 離縁できないというのであれば、シュールリトン王家の残党と結んだことにすればいいとも言った。王を裏切るような王妃など必要ないのだから。

 だが、ジュールが倒れ、残党もほとんど残っていない。ルディガーは国内の貴族達はすべて配下に抑えてしまった。離縁の理由をどう作るのかも難しい。

 ——ここを立ち去る理由がほしいのに。

 目印さえない三つの墓の前で頭を垂れる。ディアヌ以外、この場所に来る者もいないだろう。この場所は、王宮の中でも呪われた場所として語り伝えられていくのかもしれない。

 施療院での手伝いも、ここ数日は行っていない。修道女達があわただしく動き回っている中に入っていくのはためらわれたのだ。
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