不器用な殉愛
部屋に戻った時、そこに待っていたのはルディガーだった。
「大変だったな。それと、いろいろすまなかった。まさかあの広間にお前がいるとは思わなかったんだ」
「……いえ。私こそ、勝手な真似を」
全てが片付いた今、ルディガーの顔を見るのが怖い。
彼は、ディアヌを手放そうとはしないだろうから。彼のその根底にあるものがただの同情でしかなかったとしても、彼はディアヌを手放さない。
「離縁の時期はいつ頃になりそうでしょうか」
「離縁はしない——落ち着いたら、もう一度婚儀だ。きちんとした婚儀をあげる」
「……なんで、そんなことを。必要ありません!」
ルディガーはわかっていない。ディアヌを側に置いておくということが何を意味しているのか。わざわざ負の遺産を抱え込んでこれから先の人生を歩むこともないのに。
「——お前を、解放しようと思わなかったら立ち上がらなかった」
「ルディガー、でも、私は」
まだ、シュールリトン王家は滅んでいない。ここに、もう一人残っている。それを告げようとしたけれど、ルディガーは気にしない様子だった。
「諸侯の賛成も、あとひと月もあれば取り付けられる。今から、婚儀の衣装を選んでおくといい。それとも、新しく仕立てるか?」
「いいえ……そんなの、必要ないです……」
彼の手が、頬に触れる。その手が伝えてくる体温に安堵してしまいそうになる。それを見せないように、うつむいた。