不埒な先生のいびつな溺愛
私は絵里を押し退けて、思いきってドアの影から飛び出した。絵里は「ちょっと」と呼び止めたが、それも振り切って出ていった。

偶然通りかかったような小芝居をしながら、理進クラスに顔を突っ込んで、私は四面楚歌となっている久遠くんを呼んだのだった。

「久遠くん!」

彼が集めていた視線は一気に私に注がれた。

心臓がキリキリと締め上げられる。

「……秋原」

久遠くんの視線も、こちらへと向いた。突然のことに、彼は目を丸くしている。

私は肝が冷えそうになりながら、笑顔を作り、久遠くんの席へと駆け寄った。この視線の中、歩みを止めてしまったらもう挫けて引き下がってしまうから、勢いをつけて、それを失わないまま進みきった。

久遠くんの前まで来て、彼の持っていた『屈折』を覗き込んだ。

「ごめんね久遠くん、この本無理やり読んでもらっちゃって。どこまで読んだ?」
< 100 / 139 >

この作品をシェア

pagetop