不埒な先生のいびつな溺愛
その日から、私は空き教室へ行くことをやめた。
正直なところ、どんな顔をして久遠くんに会えばいいのか分からなくなったのだ。この間のは何だったんだ、そう問い詰められることも怖かった。そして彼に「余計なことすんな」なんて言われたものなら、いくら口が悪いと理解はしていても、私はきっと傷つくだろう。
絵里にも問い詰められ、空き教室でのことは正直に話した。
「そんな面白い話は、ちゃんと報告してよね」
絵里はそう言ったけれど、それ以上は聞いてこなかった。
それもそのはず、私と久遠くんの話は、誰が聞いても面白くなんてないのだ。時間を共有していただけで、盛り上がる話はひとつもしていない。
でも今は、あの時間がとても恋しい。
──それから数日後。
昼休みが始まって、トイレのために席を立ち、戻ってきてお弁当を広げようとすると、絵里が興奮気味に私に駆け寄ってきた。
「美和子!美和子!どこ行ってたの!」
絵里だけじゃなくて、周囲にいた数人にも、戻ってきてすぐにキャーキャーと騒いで出迎えられた。
耳を塞いで席について、「トイレだけど何」と答えると、絵里は私がせっかく袋から出したお弁当を乱暴に包み直して、袋に戻し始めた。
「ちょっと、絵里」
「お弁当食べてる場合じゃないよ!さっき久遠くんが美和子に会いにきたんだから!『秋原どこ?』って言ってさ!ヤバくない!?」
え?
「久遠くんが……?」
「ホント!!なんで美和子タイミング悪いのよー!いないって言ったら行っちゃったよ!? 今から会いに行ったら!?」
「会いに、って……」
わざわざ私を探してこのクラスを訪ねてきたという久遠くんを想像して、私は誰が見ても分かるほどに真っ赤になった。