不埒な先生のいびつな溺愛
……久遠くん、耳が赤い。

いつもの久遠くんとは違うところを見つけて、私はまた舞い上がり、ドキドキを抑えつけるように、制服の胸のリボンのあたりをグシャリと潰していた。

「そうだね、明日、持ってくる」

こっちを向いてくれない久遠くんの表情を、勝手に想像してしまう。色々と期待してしまう。

彼に告白した女の子の気持ちは、きっとこんな感じだったのだろう。
言葉の少ない彼にこっちが勝手に期待を募らせて、そして気持ちをぶつけたら、それは彼にギタギタに裏切られてしまうのだ。

分かっているけど、この込み上げてくる嬉しさはどうにもできない。

「良かった。久遠くん、普通に話してくれて」

彼の機嫌をうかがうための変な駆け引きは何も思い付かなかった。
思ったことを素直に並べ立てるだけで精一杯。でもそれが、彼とのコミュニケーションでは、一番上手くいくのではないかと、このとき気づいた。

「なんだよ普通って。何もねえだろ」

「変なこと言っちゃったから、この間。久遠くん怒ってるかと思ってたの」

「………お前さ」

久遠くんがこっちを向いた。
このときの顔は少し怒っていた。

「あのとき、まさか俺に助太刀しようとして、あんなこと言いに来たのかよ」

冷や汗が背中を流れていった。心臓の音は大音量で体の中を巡り出す。何と答えることが正解なのか全く分からなかった。

正直に言えば怒らせてしまうのかもしれない。きっと「余計なお世話だ」と言われて、私が傷つくことになるだろう。
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