がらくたのハート
3 ごめんなさい
その夜、ワタシはまた博士に尋ねました。

『博士、教えてください。ワタシがカノンさんにしてしまった事は、幸せではないのですか?』

博士は言いました。

「お前にとって、ワシはなんだ?」

『博士は、ワタシを製造してくれた人です』

博士は、また溜め息を吐きました。

「では、カノンにとって父親や母親はなんだ?」

『カノンさんを産んだ方ですね。父親のパッヘルさん、母親のベルさん』

「……そうだ。今まで育ててくれた二人が死んでしまったんだ。それをお前は幸せと言ったんだ。わかるか?」

『はい。それでもカノンさんは幸せといいました』

カノンさんが産まれて15年たった時、パッヘルさんとベルさんは亡くなりました。
嵐の夜でした。

チューバ山脈の向こう側にある、トライメライ王国へ羊毛を届けに行く途中でした。
雨により、緩んだ山肌が滑り落ちて。
土砂がお二人に直撃したのです。

それから3年間、カノンさんは一人です。
それでも幸せといいました。

「それを強がりというのだ。ボロ、人間はな。悲しい事やつらい事があった時に、周りに心配させまいと強がりを見せるものなのだ」

博士。では、ワタシが言ってしまった事は……。

『酷い事を……言ってしまったのですね』


ワタシにも、心があれば……。
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